自分だけの正義はいらない

自分だけの正義はいらない

SNSなどで自分の正義を振り回している人が増えています。世の中の正しくないことに対して、強い言葉で非難する。そしてそれに同意してくれる人がいて、気持ちよくなってまた強い言葉で非難するというのを繰り返す。それが人生を困難にしているとも知らずに。

自分の主張を自由に述べられるようになったのは、とてもいいことのように思えますが、「あえて語らない」という選択をできる人が減ってきました。それを美徳とする考え方も、もはや古いものなのかもしれません。ただ、穏やかさとは違う方向に進んでいます。

誰かを非難することは自分を苦しめることになる

最近メディアをにぎわしているUberEatsですが、配達員の交通マナーがひどくて、これをSNSで非難している人が大勢います。確かに目に余るような運転をしている人もいますし、実際に事故なども起きています。こういうことに対してどうあるべきか。

理想は「自分は交通マナーをできるだけ守るようにしよう」と、自分のことに置き換えて考えることです。反面教師ではありませんが、人の振り見て我が振り直せというのがこの国に古くから伝わる言葉。人の悪いところを見て、それを非難するのではなく自分を正す。これが最も美しいあり方です。

ところが、SNSでは人の悪いところを見て、その人を徹底的に叩きます。UberEatsの配達員だけでなく、不倫した芸能人や不祥事を起こした経営者など、標的を見つけては強い言葉で非難して自分に酔う。

この国には表現の自由があるので、正義を振り回すのは自由なのですが、それが自分の行動に制限をかけてしまっていることに無自覚で、最終的には自分自身を苦しめることになるということを理解している人はいません。

例えば信号無視をして横断歩道を渡った人を非難する。それは正しいことではありますが、それをすることは自分に「どんな状況でも信号無視をしてはいけない」というルールを課すことになります。100%安全という状況でも、ものすごく急いでいるときでも信号無視を守らなくてはいけなくなります。

信号無視は例えですが、非難するということは自分はそれを絶対にしないという足枷をつけることであり、自分の自由度を奪うことにもなります。

ダブルスタンダードになると自分を保てなくなる

誰かを非難して自分の自由度がなくなるくらいならまだいいのですが、実際にはほとんどの人がダブルスタンダードになります。他の人はNGで、自分はOKというようになります。自分が違反をするときには、違反してもいい理由を考えて、問題ないとします。

でもこれには2つの問題があります。

  • 信用を失う
  • 自己矛盾により精神的なダメージを負う

SNSで誰かを非難して賛同を得た場合、周りから見ると「この人は正しい行動しかしない人」というイメージになります。これは期待通りなのでいいのですが、ところが自分が非難した人と同じ行動をとったのを見られると、積み重ねた信頼がすべて失われます。

プラスマイナスゼロではなく、大きくマイナスになって「あいつは信用できない」というイメージが定着する。そうなると自然と周りが離れていきます。チャンスも与えられなくなり、言葉を発しても誰も振り向いてくれなくなります。

さらに自分が強く非難した行動を、自分はOKとした場合でも、心のどこかに引っかかりが生まれます。ダブルスタンダードにするということは、心にとって自分を失うことになるので、安定感がなくなり落ち着きのない人間になっていきます。

それを何回も繰り返せば、自分を保てなくなり、精神的に追い込まれて壊れてしまうこともあります。

怒りを発してもストレス解消にはならない

誰かを非難する。怒りをぶつける。人間としてあたり前のことだし、それをしないことでストレスが溜まるじゃないかという人もいると思います。でも、怒りをぶつけてもストレス解消にはなりません。

その瞬間だけすっきりはします。でも、怒りや強く非難すること事態がストレスを生み出します。自律神経のバランスが崩れていますので、その瞬間はすっきりしても、イライラが収まることはなく、またすぐにどこかで発散したくなります。

このサイクルに入ると抜け出すのは容易ではありません。いつも怒りっぽい人が周りにいると思いますが、これは怒りが怒りを引き起こしているためで、その連鎖を断ち切れないからずっとイライラしてて、ちょっとしたことで怒るわけです。

怒りの感情が発生するのはある程度は仕方のないことです。でも、それをコントロールできずに、SNSなどにぶつけるのは仕方のないことではありません。それらは自分自身で止めることができます(一部でコントロールできない人もいますが、それは病のひとつです)。

これだけは覚えておいてください。怒りを発散してもストレス解消にはなりません。怒りは自分の心で包み込んで、熱が下がるのを待つ。少なくとも他人に対する怒りはそうするほうが賢明です。自分に対する怒りはまた違いますが、それは別の機会にでも。

他人が何をしようが気にする必要はない

人の振り見て我が振り直せとお話しましたが、実際には人の振りを見る必要もありません。他人がどのような振る舞いをしていようと、自分自身には関係のないことです。UberEatsの交通マナーが悪かろうが、芸能人が不倫しようが関係ありません。

交通マナーが悪いのは完全に関係ないとはいえませんが、それを怒りにしてSNSにぶつけるのではなく、視界に入ったら近づかないようにするくらいでいいんです。相手に変わってもらおうなんて願うのはムダです。自分自身で変えられるのは自分の行動だけです。

他人の行動なんて大雨や強風のような自然現象と同じです。自分の正義をぶつけてみたところで何かが変わるわけもなく、自分が消耗するだけです。だから、自分の正義は自分だけに当てはめて行動すればいい。

誰かを非難して注目を浴びる。とても気持ちがいいことかもしれませんが、みっともないし最終的には味方はいなくなります。少しでも穏やかな自分でいたいなら、他人と自分の境界線を明確にしましょう。大事なのは自分のあり方だけです。

どんなに正しいことであっても、見る角度を変えれば正しくなくなることなんていくらでもあります。自分の常識を人に押し付けないように気を付けてください。

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