
脂質は太るから体に悪いと思っている人もいまだに一定数いるようですが、脂肪は3大栄養素のひとつで、必ず摂取しなくてはいけない栄養素のひとつです。脂肪が少なすぎると肌トラブルなども起きやすく、とても健康的に見えない状態になります。
とはいえ脂質は少しやっかりで、摂りすぎても体によくありません。単純に太るというのもありますが、様々な病気を引き起こします。そうならないためにも脂肪についてある程度の知識は身につけておきたいところです。
そこでここではまず、脂質の中でも飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について、分かりやすく解説していきます。
脂肪・脂質とは何なのか
そもそも脂肪や脂質というものが何なのかについて説明します。
脂肪と脂質の違い
少し面倒な話なのですが脂肪と脂質は違います。
脂肪:動物や生物を構成する成分
脂質:栄養素
かなり大雑把な分け方ですが、専門家でもなければこのような分類で十分です。豚のお肉に付いているのは脂肪ですが、それを私たちが食べるときには、栄養学的に脂質と呼びます。このあたりは混同しそうになりますが、できるだけ意識して使い分けしましょう。
脂質は3大栄養素で最も高エネルギー
脂質は3大栄養素のうち単位重量あたりの熱量が飛び抜けて高い栄養素です。
炭水化物:4kcal/g
タンパク質:4kcal/g
脂質:9kcal/g
1gの炭水化物よりも1gの脂質のほうが、2倍以上も最も大きなエネルギーになります。このため脂質は太るという印象を持つ人も多いのですが、太ってしまうのは必要以上に摂取しているからであって、脂質が悪いわけではありません。
必須脂肪酸とは
私たちが摂取した脂質は、すい臓のリパーゼと呼ばれる消化酵素によって、脂肪酸とモノグリセリドに分解されます。この脂肪酸にはいくつもの種類があり、人間が体内で作ることができるものと作れないものがあります。これを必須脂肪酸といいます。例えば次のような脂肪酸は、食べ物から摂取しなくてはいけません。
- オメガ3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)
- オメガ6系脂肪酸(n-6系脂肪酸)
これらが不足すると高血圧、、乾鮮、湿疹やアレルギー皮膚炎、ガン、糖尿病などを発症します。免疫不全、血栓形成、血小板減少、小児成長障害、脳の発達障害なども起きることもあり、とにかく必須脂肪酸が足りないと体にとってよくないことが分かってもらえたかと思います。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の基本
脂質が体にとって必要なものだということを理解してもらったとことで、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について説明します。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は脂質の分類になります。
飽和脂肪酸
- 長鎖脂肪酸:やし油・パーム油・牛脂・豚脂
- 中鎖脂肪酸:牛乳・乳製品・ココナッツオイル
- 短鎖脂肪酸:バター・酢
不飽和脂肪酸
- 一価不飽和脂肪酸:オリーブ油・なたね油・牛脂・豚脂
- 多価不飽和脂肪酸
- ω-3系脂肪酸(n-3系脂肪酸)
- リノール酸:紅花油・コーン油
- γ-リノレン酸:母乳
- アラキドン酸:レバー・卵白・サザエ
- ω-6系脂肪酸(n-6系脂肪酸)
- α-リノレン酸:しそ油・えごま油
- EPA(エイコサペンタエ ン酸):魚油
- DHA(ドコサヘ キサエン酸):魚油
ざっくり説明すると、油はこのように分類されます。すでに説明した必須脂肪酸は不飽和脂肪酸のうち多価不飽和脂肪酸が該当します。これらの脂質を積極的に摂ることが体にとって望ましく、反対に飽和脂肪酸はできるだけ抑えるのが理想です。
1日に必要な脂質と必須脂肪酸の量
1日に必要なカロリーのうち20〜30%を脂質で摂取するのが理想と言われています。1日に2,000kcal必要な人の場合は、25%を脂質で摂るとして500kcal、約55gの脂質を摂取する必要があります。ただ、脂質ならなんでも良いというわけではありません。
大事なのは必須脂肪酸をしっかりと摂るということです。推奨されている必須脂肪酸の量は下記になります。
オメガ3系脂肪酸:1.8~2.4g/日以上
オメガ6系脂肪酸:7〜11g/日
思った以上にたくさんの必須脂肪酸が必要だと感じたかもしれません。特にオメガ6系脂肪酸は7〜11gですので、かなり意識して摂取しないと不足します。できれば1日1回は魚を食べておきたいところです。
飽和脂肪酸はバランスよく摂取する
不飽和脂肪酸は必須脂肪酸が含まれているので、多価不飽和脂肪酸を中心に積極的に摂りたい脂質ですが、飽和脂肪酸は過剰な摂取を避けなくてはいけない脂質と言われてきました。なぜ飽和脂肪酸を摂取しすぎてはいけないのか、その理由を挙げていきます。
- 心筋梗塞のリスクが高くなる
- 動脈硬化のリスクが高くなる
- 必須脂肪酸の変換を妨げる
これだけ読むと「よし飽和脂肪酸は避けよう」となってしまいますよね。実際に以前はそう考えられていました。ところが飽和脂肪酸が少ないと、今度は脳出血や脳梗塞による発症リスクが高くなるという研究結果が国立がんセンターから発表されています。
少し混乱しそうですが、飽和脂肪酸は多すぎても少なすぎても健康にとってはよくないというのが最新の研究結果になります。国の指針では総エネルギー摂取量に占める割合を7%以下にするようにしていますが、あまりにも減らしすぎるのも避けましょう。
2,000kcalの摂取なら140kcalですので、飽和脂肪酸は15.6g以下に抑える必要がありますので、10〜15gくらいに収まるようにしたいところですが、正直なところここまで細かく決めて摂取するのはかなり難しいので、程よく乳製品を摂取を心がけるだけでOKです。
一応、よく口にする食材100gごとの飽和脂肪酸量を記載しておきます。
ヨーグルト | 1.8g |
牛乳 | 2.3g |
輸入牛肉,ばら,脂身つき | 13.0g |
チーズ | 16.0g |
バター | 50.0 g |
トランス脂肪酸はそれほど考えなくていい
脂質を語るときに必ず出てくるのがトランス脂肪酸です。トランス脂肪酸は生活習慣病を引き起こすリスクが高い脂質です。牛肉や羊肉、牛乳や乳製品にも含まれていますが、かなりわずかな量ですのであまり気にする必要はありません。
気をつけなくてはいけないとされてきたのが植物油や魚油を液体から個体にするときに発生するトランス脂肪酸で、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどに多く含まれており、それらを使って作る菓子パンやケーキ、ドーナツなどもトランス脂肪酸が多く含まれていました。
ところが最近はマーガリンもトランス脂肪酸が少ないものも増えていますので、日本ではそれほど気にする必要はなくなってきました。
トランス脂肪酸の摂取量は総エネルギー摂取量の1%以下にするように国際機関が勧告しています。2,000kcalなら20kcalですので2.2g以下になります。クロワッサン100gで0.54g、ショートケーキ100gで0.42gですので、決して少なくはありませんが、毎日大量に食べなければ過剰摂取にはなりません。
できればマーガリンよりもバターのほうがおすすめですが、神経質になってストレスを溜めるよりは「できるだけ気をつける」くらいで十分です。ただ、海外などでパンやケーキ、ドーナツを食べるときは気をつけましょう。
まとめ
3大栄養素のひとつでもある脂質。肥満の原因になるからといって摂取しないように心掛けている人もいるようですが、一定量の脂質がないと私たちの健康は維持できません。それも必須脂肪酸は必ず必要になり、不足すると体のあちこちにトラブルが発生します。
必須脂肪酸ではない飽和脂肪酸はこれまでは「できるだけ少なく」とされてきましたが、最新の研究では少なすぎるのもよくないことがわかっています。チーズや牛乳、ヨーグルトなどで程よく摂取しておきましょう。
トランス脂肪酸は摂取しないのが理想ですが、以前ほど神経質にならなくて済むようになっています。これについてはいずれまた細かく説明します。かつては気を使わなくてはいけないこともありましたが、最近は脂質の多いパンやケーキ、ドーナツを常食しないくらいでOKです。
あまり神経質にならずに、ただ脂質についてここでご紹介したくらいの知識は持っておくといいでしょう。よくわからない脂質も、詳しく知ることで重要性もわかり、そして過剰摂取の危険性もわかり、上手に付き合えるようになります。大事なのは知っているということです。